「ヘンリーブラウンの誕生日」・・・ 2008年度 コルデコット賞オナー賞を受賞した『Henry's Freedom Box』の出版を決めたのは、ちょうど1年前のことでした・・・
米国では小学校の授業に絵本は欠かせないと聞きます。重いテーマの絵本を、積極的に学校の授業で取り上げ、子どもたちに歴史学習をさせています。教科書のない国ならではの絵本活用法と言えます。多くの優れたノンフィクション絵本が出版され、子どもたちに読ませている事実は、とても羨ましい限りです。
幸せな結末の絵本を与えがちな日本では、大人が敬遠してしまうテーマの絵本はあまり販売が進まないのが現実で出版されることが難しいのですが、あえてチャレンジしてみました。なぜなら、絵本は大人が子どもに手渡すことができる唯一の書物であるということを、強く認識しているからです。
本書の内容を少しご紹介しましょう 主人公のヘンリーブラウンは、今から160年前の1849年3月30日、自らを木箱に詰め込み貨物となって、奴隷制のない北部へ27時間をかけて逃亡します。 脱出に成功したヘンリーはアメリカやヨーロッパの新聞に大きく取り上げられ、「ヘンリー・ボックス・ブラウン」と呼ばれるようになりました。 絵本では、彼の生い立ちから、結婚、家族の離散を経て奴隷解放地下組織の力を借りて逃亡するまでの全過程が見事に書かれてあります。 でも、どうしてこんなにまでして脱出したのでしょう・・・ それは、つらい労働ばかりではなく、家具や家畜と同じように誰かの持ち物として扱われ、持ち主の都合で妻も子どもも売られてしまう、無慈悲な境遇に置かれていたからです。
作家のエレン・レヴァインさんの静かな語りが見事で詩的です。加えて画家のカデイール・ネルソンさんのイラストが見るものの心を揺さぶります。迫力満点とはまさにこのことです。 この絵本を今の日本の子どもたちに、 私たち人間が決して忘れてはならない歴史があること。人間らしく生きる希望と誇りを忘れず持ち続けたひとりの人間の姿を、自由の重みを伝える実話として手渡したいと思います。
折りしもオバマ大統領が世界の脚光を浴びています。 何故米国で黒人大統領が誕生したのでしょうか? これから奴隷解放、アンダーグラウンド・レールロード、公民権運動等について、草の根の真実がどんどん伝えられることになるでしょう。
どうか、多くの方々のお力で、本書が広く静に読み継がれることを強く願ってやみません。